ようやく、表もひと段落つき。 俺は、車に乗り込んだ。 4.プラス、マイナス 乗り込むと、嬉しそうな声が降りかかった。 「よかったぞ、蓮」 お疲れ様、と社さんが笑顔を向ける。 「帰るぞ」 俺は、あれからしばらくあの場所にいた。 彼は、俺が明日の台本読みをしているとでも思ったのだろう。探しに来たりはしなかっ たようだ。 今度ばかりは、一人で台本を読むタイプでよかったと思った。 しかし、何の反応もせず、黙り込む俺を不審に思ったのだろう。 「どうした?」 と尋ねてきた。 俺の頭はいま、負の感情しかない。 よく考えもしないままポロリと口から零れた。 「社さん、恋愛って何なんでしょうね」 「・・・どうしたんだ、本当に」 そういって、そうだなぁと考え込む。 こういうところが、この人のいいところなのだと思う。 俺には出来ない。 「いろいろと考えてるうちは、違うんだよ。そういうのは、恋に恋してるっていうのか な。俺も上手くいえないんだけど、相手の善し悪しをポイントにするとかいうのは、違 うんだろうなぁ。ああ、この人だって思う相手がそうなんだよ。理屈じゃない。相手に 合わせるんじゃなくて、二人で近づく、依存じゃなくてな。俺的考えだけど」 プラス、マイナスじゃないってことか。 じゃあ、俺は、小さなころから好きだったことになるのだろうか。 どこにいても、ふと思い出すのはあの子。 無意識に、この子だったらと思っていたことも否定は出来ない。 近づきたいと思った。 近づく男に対して、イラツキも覚えた。 もう、遅いのだろうか。 「何も言ってもらえないのは、信頼されてないんでしょうか」 「どうだろうなぁ。でも、心配をかけたくないっていう考えもあるし」 「頼って欲しかった」 「いろいろと思うところがあるんじゃないのか、その子にも」 何も聞かずに話を聞いてくれる彼を、ありがたく思った。 そして、車は走り出す。 自宅について、降りるとき。 「話したくなったら、話せよ」 と。 はい、そう言って笑う。 「また明日」 そう、明日がある。 next:05![]()
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