カラーン、カラーン・・・・・・ 「大当たりです、お客さん!!」 って、・・・えぇぇ―――っっっ!?擬似契約 -ケイヤク・カイシ-「・・・という訳なんです」 どういう訳かというと、買い物のついでに貰った大型店のくじ引きがみごとに特 賞だったということ。 「でもねえ。せっかくなんだからキョーコちゃんが行っていいのよ?」 「いえ。でも、私仕事が入っていて行けないんです」 そう。ちょうど出発日に評判のよかったキュララのCMの続編の撮影日が重なっ ている。それに、私が来てからこの二人がゆっくりと休んでいる所を見た事が無 い。だから、せめてものお礼と思ってこの話を切り出したのだ。 「ほら、そうしたら私もあの人もだるま屋を休むわけにいかないでしょう?」 「この間、久しぶりに旅行がしたいって言ってたじゃないですか」 そう。つい先日、大将が仕入れに行っているとき、ぽつりと呟いていたのだ。た まにはあの人と二人でゆっくり旅行にでも行きたい、と。仕事一筋の人だから無 理だろうけどねと笑っていたけれど、少し淋しそうだった。 「でも・・・」 そう言って、女将さんはちらりと主人をみた。すると、 「別に嫌じゃねーよ。今まで働き通しだったんだ。そのくらい二人で休んだって かまやしねぇさ」 と、ぶっきらぼうな言葉が返ってきた。その瞬間の女将さんの顔がすごく嬉しそ うで、私まで嬉しくなった。大将を見ると、ほんの少し赤らんでいた。よかった 、言ってみて。券も無駄にならずにすんだし。 「じゃあ、ありがたく頂戴するわね。ここ、使っていて構わないから」 「はい、ありがとうございます。ゆっくり楽しんできてください!」 そして、一週間後、彼らは新婚旅行以来の旅行に出かけた。彼女が行って見たい といっていた外国に。しかも約3年かけて行く、世界一週の旅へ・・・ 私が当てた旅行は、何と世界一周豪華客船クルーズだったのである。 そして、その日は突然訪れる。 撮影が思ったよりも長引き、急いで返ってきた日。蒸し暑い中走ってきた ため、汗ばんでいて。涼もうかと扇風機のコンセントに手をのばした瞬間、 ヤツが現れたのだ。 「・・・・・・・・・っっっ!!!!」 ヤバイ、非常にヤバイ。私、そんなに嫌いなものはないけど、いや、ショータロ ーと敦賀蓮は大嫌いだけど、ってそうじゃなくて!私、コイツだけは苦手なのよ ーっ!!あの黒光りした背中、想像するだけで、鳥肌が立つわ!!!この前どこ かでエメラルドグリーンのコイツを見たけど、やっぱり駄目だったし。どうしよ う、腰が抜けちゃったわ・・・。モー子さんも、そういえば死ぬほど嫌いって前 に言ってたっけ。誰かいないかしら。恥ずかしいけど、そんな事言ってる場合じ ゃないもの!社さん・・・、駄目だ。昨日インフルエンザで倒れたのよね。ショ ーの番号は知らないし・・・。 あ、いた。一人だけ。ついさっきまで一緒にいた人。ものすごく抵抗があるんで すケド。でも、コイツには勝てないもん・・・。しょうがないか。 そう。今日の仕事は、社さんの代わりのマネージャー。ついさっき、送ってきて もらったばかりだった。 そんな彼にいやみを言われるのを覚悟で、私はちょうどポケットに入れっぱなし だった携帯に手をのばした。 ちなみに、ここまで考えるのに要した時間はおよそ5秒。ついでに、彼にかけた 電話の第一声が”助けてくださいっっ!!!”だったから、きっと彼は慌てたに 違いない。と、思う。それに、動転していてうまく日本語にならなかったし。 だって、敦賀さん、すごく焦った様子で部屋に駆け込んできたから。 「どうしたっ!?」 軽く汗ばんで、息も荒く、彼が部屋に駆け込んできた。私は、何しろ腰が抜けて いるものだから、玄関までいけるはずも無く。ただ、”開いてます”としか言え なかった。 「何かあったのか?何かされたのか??」 私の前にかがみ必死に聞いてくる彼に、これから説明する事が本当に恥ずかしか ったけれど、でも、何とかしてくれないとこれからの私の生活に支障が出る。 「あ、あの敦賀さん?」 「何があった?」 「何でそんなに慌ててるんですか?」 説明しようと思ったのに、私の口から出てきたのはこんな言葉だった。 「当たり前だろう!?助けてください、だなんて。誰だって驚くじゃないか!俺 のいなくなったすぐ後だったから短時間で来れたけれど、もし通じなかったらど うするんだ!!何かあってからじゃ遅いんだぞ!?」 一気にまくし立てる彼。珍しいものを見たなぁ、なんて思いつつ、 「あ、あのですね、実は・・・」 と、私は言いにくい内容を話したのだ。 聞き終わると、彼は大きなため息を一つついた。 「そういう事なら、ちゃんと言ってくれ。本当に寿命が縮んだよ」 「そんな事言ったって、私にとっては一大事だったんですよ!!」 あ、ヤバイ。目が潤んできちゃった。 すると、私から目をそらし、ちょっと待っててと言うと彼は今までの騒ぎにも動 じなかったヤツを退治にかかった。 ぱぁんっ!!!という、大きな音と共にヤツは退治された。 わずか数秒で終了。 本当に悪いことをしたなぁ、と思い謝ろうと上を見ると、彼が怒ったような顔で 仁王立ちしている。 こ、怖い・・・。 怒られる!そう思って肩をすくめると、ふわりと抱きかかえられてしまった。い わゆるお姫様だっこというアレである。 「・・・へ?」 ついまぬけな声を発してしまった私を見て、彼は恐ろしい笑顔を私に向けた。そ して、その顔のまま告げたのだ。 「もう、こんなこと何度もされると俺早死にしてしまうから。責任をとってもら うよ、ラブミー部さん?」 こうして、私は彼に連れられ、行き先も告げられぬまま車に乗せられたのだ・・ ・。 冗談じゃない。一体何があったのかと本気でぞっとした。あの子に何かあったら 耐えられない。しかも、分かれたすぐ後だったのだから尚更だ。家に帰ったのを 見届けてから出たから、大丈夫なはずだと言い聞かせて、急いで戻った。今回は 何も無かったけれど、一人で住んでいるんだから、何があっても不思議じゃない 。今まではそれほど気にしていなかったが、今回の事でよく分かった。もう、こ んな思いはしたくない。いっそのこと俺の目に届く場所においておけばいいんだ ・・・。 何故、俺がこんな思いに捕らわれるのか。責任か?送っていった人間としての。 しかし、ここまで焦る事なのか? 揺られに揺られて数十分。ついた先は、なんとも立派なマンション。 「何でここなんすか?」 そうきく私に。 「どうしてでしょう?」 と尋ね返す敦賀蓮。 だから、何で私が貴方の家に来なくちゃならないんですか!?と聞くと。 さっき言ったでしょう?と返された。 はて、何ていってたかしら。私、貴方に抱えられたおかげで何にも覚えてないん ですけど・・・。 そんなことを思っている間に、あいかわらず立てない私を先ほどと同じように抱 え上げ、中へと入っていった。 「さて。今日からここに住んでもらうから」 部屋に着いて初めて彼の発した台詞がこれだった。 「は?何でですか?どうして私が敦賀さんと一緒に住まなきゃならないんですか !!帰してください!!!」 「言っただろう?責任をとってもらうよって。あんなこと何回もされたら過労で 死んでしまうよ」 何が過労よ!熱が出たって演技する貴方が。何を企んでるわけ? 「それに、俺、一人だとご飯も食べないし。作ってくれるとありがたいんだけど」 彼は、家にはほとんど仕事でいないから平気だよ、と付け加えた。 そういうことね。要するにご飯を作ってくれる人が欲しかった、と。あー、そう。 いいでしょう、やってやろうじゃないですか!社さんも、蓮が飯食わないんだ、と 本気で悩んでいたようだし。いろいろ心労抱えてるのね。だから体弱いんだわ、き っと。今度社さんにもご飯持っていこうかな。なんて考えながら。 「ハンコは付きます?」 「君の努力次第で」 こうして、私と彼の同居がスタートしたのだった。 敦賀さんはあまりいないというわりによく帰ってくる、ような気がする。そして 、きちんとご飯も食べてくれる。なるべくなら一緒に食べようと思って、私も待 つようにしているし。やっぱり、だれかと一緒の食事って嬉しいものだ、と最近 改めて感じるようになった。ちなみに、このことはまだ誰にも言っていない。![]()
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