ちらりと見えたポスターに。 確かに意識は奪われたけど。 本性 ふと感じた影。 進路を遮る障害物。 隣から消えた気配。 ・・・ん? 「っ!!離れてください!」 「どうして」 「近いんですっっ!!」 下から覗き込む敦賀さんの顔と、現実に戻った私の顔との距離が あまりにも近くて思わず飛びのいた。 「何度名前を呼んでも返事がないから、熱でもあるのかと思って」 「じゃあ、手で測ればいいじゃないですか!」 「俺の手は、基本的に冷たくてね」 「構いません!!」 でもそれじゃあ君がびっくりするじゃないか、そう彼は言う。 「それ以前に敦賀さんが、私の熱を測ってどうするんですか!」 「だって、心配じゃないか。君、自分の事には無頓着だし」 「貴方に言われたくありません!!!」 自分が風邪をひいてることにだって気づかなかったくせに!!! 「顔だって、何だか赤いし」 「それは、頭に血が上っているからです!!!」 絶対に分かってて言ってるんだわ! いきなり額で測ろうとしないでよ!! 帝王なんだから!!! 本人の前で言ってやりたい!!! その後が怖いから、心の中にしまっておくけれど。 確かに、一瞬見えたあの男に意識を奪われていたけれど。 返事をしなかったのは悪いと思うけれど。 だからって、そんなにボーっとしていたたわけじゃ・・・。 「君は今誰といるの?」 いきなり投げかけられた言葉。 「はい?」 「アイツといるのか?」 「は?」 目の前にいるのは俺だろう?と彼は問う。 「当たり前じゃないですか」 そう答えると、戻ってきたのは大きなため息。 「失礼ですね!!なんでそんなに大きなため息なんて・・・!!」 思わず叫んだ私に、恐怖のスマイルが牙をむく。 「な、何ですかその極悪スマイルは」 「失礼だね、この笑顔の何処に悪がいるっていうんだい?」 「そのまま全てです!!!」 世の女性は、この笑顔が好きなようだけれど? そう笑顔のままで尋ねてくる彼に。 ”そんなの本当の敦賀さんのことを知らないからに決まってる じゃないですか!!!” と返せば。 ”そうか” とだけ。 私は先に歩いてしまっていたから、そのときの彼の表情が嬉しそうに、 切なそうに破顔していた事なんて全く知らない。 あいつの事が頭から綺麗に消えていた事も。 変わりに目の前の男でいっぱいになっている事にも自分では気づかない。 もちろん、彼が小さく呟いた言葉だって。 俺が口説きたいのに、口説き落とされた気分だよ なんて。 知るわけも無い。