うわぁ、随分たくさんの花!今日の収録で使うのかしら? そう思って眺めていたら、急に後ろから声がした。 「おや、いい香だね」 「!!!」 いつもそう。この人が私の所に来るのは、私がちょっと気をぬいてる時ばっかり!逃げられない タイミングで来るんだから。何なのかしら?全く・・・ 「当たり前です!見えないんですか?今日の収録で使うみたいなんですよ」 そう。今日は彼のインタビューの収録日。スタッフ側も期待が入っているのか、様々な花が飾っ てある。 まだ、集合時間より早い為、次のドラマの撮影のセリフ練習をしようとしていたのだが、偶然彼 女を見つけ、必然として話し掛けた。 「へぇ、気合はいってるのかな?やっぱり、いい男には扱い方が違うね」 「へぇ…。」 いつもなら、何言ってるんですか!?と叫び返すだろうに、今のキョー子は明らかに話を聞く気 のない顔をしている。 「どうしたの?もしかして、花嫌い?」 にこやかな顔をして尋ねる彼を目の前に、彼女は呆けていて適当な返事を返してしまった事を後 悔しつつ、少し言いずらそうに答える。 「えっ、いえ嫌いって訳じゃないんですけど。あんまり匂いが強いから、ちょっと香負けしちゃ ったのかもしれませんね」 「そうか。でも、そういえば少しきついかもね。俺も長時間ここにいたら君みたくなりそうだ」 そういうと彼女の顔が曇った。そして、すぐに赤くなる。 「すみませんね、ほんのちょっとの時間でこんなになっちゃって!」 そんな素直な反応が面白くて。だからついつい構いたくなってしまうのかもしれない。 「じゃあ、花は好き?」 「いや、あの、嫌いじゃないんですけど…ただ、こういう風になっちゃった花って人間に水を貰 わないと生きていけないから。他力本願だなぁ…って。」 蓮の中に、キョー子の言った"他力本願"という言葉が残った。 「…それはつまり、他人の力を借りて生きていくということかな?」 「え?あ、まぁ、そういうことになりますけど…。」 「じゃあ、俺も君も花と同じだね。もっとも、君はあんなに綺麗じゃないが…。」 「えーえー、そうですよ!!私は花みたいに綺麗じゃ…?」 そう言いかけたのだが、キョー子は一瞬、蓮が何を言っているのかわからなかった。 「え…?敦賀さん、それってどういうことですか?」 「当たり前じゃないか。俺だって、人の力を借りないと生きていけないよ。世の中みんなそう だ。特にこの世界はね。見られて、目立ってなんぼの世界なんだから。君だってそうだろう?一 人ではないはずだ」 そう言われて、初めて自分の言っていることの矛盾を感じた。 そうだ、考えてみれば私だっておかみさんや大将のおかげでここにいれるし、モー子さんがいる から仕事もずっと楽しいし、マリアちゃんや社長や、みんなのおかげで笑っていられるんだ わ・・・ 「はい、そうですよね。私何言ってたんでしょう。変な事言ってしまってすみません…」 すると蓮はにっこり笑ってこう言った。 「最上さん。人は誰しも他人の力を借りて大きくなるんだ。一人で生きられるものなんて存在し ない。私も君に助けられたことがあるしね」 「え!?私ですか?」 キョー子は急に自分の話題となったことに、驚いてしまう。 「ああ、体調を崩してしまった時はとても世話になった。俺一人では正直どうしようもなかった からね」 「そんな、私は何にもしてませんよ。敦賀さんの回復力が凄かったんです。私はそのお手伝いを しただけですから」 「その手伝いが嬉しかったんだよ、ありがとう」 「!!!」 「じゃ。また後でね」 彼女は彼のその言葉に呆然とし、やっと意味を理解した頃には彼の姿は無く。そして、彼女の顔 は真っ赤だった。 その彼も。ほんの少し頬に赤みがさしていて。 どうして、彼が彼女に話しかけるのか。 それは、少女の表情が放っておけなかったから。 というのは彼も知らない彼だけの秘密。![]()
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