あの人との共演。 ずっと、ずっと望んでいたこと。 でも、このタイミングはないんじゃない? ついさっき、自覚したばっかりなのよ? ええい!女でしょ、キョー子!!! 覚悟を決めなさい!!!!! ――――――スタート! 「章吾さん、待って…!!」 ―――待って敦賀さん! 「…、俺に何の用なんだ?」 「好きなの!もう、どうしようもないの!!!」 ―――やっと、本当に好きな人を見つけたの。 「答えられないと言っているじゃないか。もう、決めた人がいるんだ」 「諦められないの。やっと。やっと、気づいたの!貴方ががいないと駄目なの!!私の、初めて の恋なの!!!」 ―――あの時も、今も。傍にいて、涙を止めてくれるのは貴方だった。 「君は、あの男が好きなんだろう?」 「あれは、憧れだったの。彼は私のないものを持っていたから。憧れと恋の区別もつかない女だ ったのよ!!!でも、やっと気づいたの。私には、貴方が必要だってことに…」 ―――そう。子供だったのよ。 「それは、俺を彼の代わりにしようとしてるんじゃないのか?」 「…!!!っそ、そんな…、そんなこと、思ってたの!?」 ―――違う!違う!! 「誰だって、そう思うだろう!?」 「違う!!!」 ―――違うわ!!! 「絶対に…?」 「誓えるわ。私は、貴方を愛してる」 ―――大切なの…。 「信じられないね」 「………っ!!?」 ―――本当なのに…。嘘じゃないのに!! 「話はそれだけ?じゃあ、行くよ。もう会うこともないだろうけれど。さようなら、小夜子」 ―――やっぱり、私は誰にも必要とされないのね…?愛される資格も、いいえ、愛する資格も ないのね?そうよね… 駄目、どうしてもどうしても重ねてしまう。自分と、小夜子を… ―――――――カーット!!! 「いやぁ…よかったよ、キョー子ちゃん。本当に小夜のようだった。最後の切ない表情や涙。ま るで本物さながらだね。君をこの役にして、本当によかった。そして、君のその演技力に脱帽だ ね。本当に今までよく頑張ってきたと思うよ。きっと、これからこっちの仕事も増えるだろう。 って、キョー子ちゃん…?」 言葉は入ってくるけれど、理解できない。何ていってるんだろう。 もう、泣かなくていいんだよ?と少し慌てたようにいう、苦笑顔の監督の声を、やっと靄のかか った頭で聞きとめて、初めて自分が泣いていることに気がついた。 駄目だ。感情がコントロール出来ない。止まらない。止められない。一人にならなくちゃ。 「ご、ごめんなさい、監督。何だか役に入り込んじゃったみたいで…。お化粧落ちちゃいました よね?ちょっと化粧室に行ってきます」 「ああ。直してもらっておいで。それまでさっきのチェックと次のシーンを撮ったら終わりだか ら。打ち上げには出てもらうからね」 「はい」 笑えるのも限界だ。きっと、最後の返事が震えていた事に、監督は気付いていたに違いない。で も、そこで引き止めない優しさがありがたかった。 走った。走った。走った、走った走った走った。少しでも、彼のいる場所から離れたかった。会 えない。この、私のパンドラの箱の中身を知られるわけにはいかない。今回も、あの石に頼る事 になるけれど。追いつくまでは、認めてもらうまではこの気持ちを伝えないと決めたから。だか ら、早く遠くに行きたかった。彼の通った道にはいたくなかった。存在を感じたくなかった。も とに戻ったら、普段どおりに接する自身はあるけれど、今は絶対に出来ない。 私は、自分のことでいっぱいで。だから、彼が監督との会話を聞いていたことも、追いかけてく る音にも気付かなかった。いえ、気付けなかった。だって、彼を私の中から消そうと必死だった のだから。 この先の、大きな変化なんて。 この時の私には予測なんか出来なかった。![]()
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