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桜。人は皆この妖しい花に魅了されてしまうらしい。

昼は可憐で美麗なこの花も夜になるとその面差しをかえる。

薄紫の妖艶さに人の心は乱される。






さくら








蓮とキョーコは夜桜見物に来ていた。

二人で外出するのはとても久しぶりだった。

しばらく二人は黙って桜の花を眺めていた。

 

 

 

 

「ねえ蓮。貴方ってやっぱりずるいわ」

キョーコは突然蓮に向かってそんなことを言った。

 

 

「何がずるいの?」

 

 

「そこに立っていてね」

そう言うとキョーコは少し遠くに離れた。

桜の花と蓮。どちらも単体だけでも妖艶さを放っている。

そしてとどめに月の柔らかい光がますますその光景を幻想的なものにし

ていた。

誰が見てもフラッと吸い込まれる威力を持っている。

素直にキョーコは蓮にそう語った。

 

 

 

蓮は笑い出した。

 

 

 

「何がおかしいの?」

キョーコは頬を膨らませて蓮を軽く睨んだ。

 

 

 

「ははっ。ごめんごめん。キョーコには自覚がないんだなって」

 

 

 

「自覚?何の?」

キョーコがそう言いながら蓮の方を見上げるとキョーコの唇は蓮のそれ

に塞がれた。

「んっ」

深く長いキスによって、唇を開放された時にはキョーコは体に力が入ら

ず蓮に抱きとめられた。

そんなキョーコの耳元で蓮はささやいた。

「君はまだ自分の事がわかっていないんだね。今ここで押し倒したくなる

ほど君は俺を誘っているんだよ。君は桜によく似ている。昼は健康的に

美しいが夜になると見たものの心を奪ってしまうほど妖しく美しい」

そう言うと蓮は再びキョーコの唇を求めた。

 

 

 

 

 

桜。薄紫色をした妖艶なこの花のもとでは人は理性が働かなくなるらしい。

 

 









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