デジタル時計の数字が、2時を過ぎた事を告げる。 ちら、と蓮は時間を確認すると、 「…そろそろ、かな」 そう呟いて控え室で読んでいた台本を閉じた。 「何がそろそろ?」 呟いた蓮に社は問いを投げかける。 その問いに、返答は帰ってくる事はなかったが、 「こんにちは!敦賀さんいらっしゃいますか?」 返答代わりの少女が、控え室に入ってきた。 【いつも通りの出来事】 「今日は休憩時間が短いって仰っていたので、サンドウィッチにしてみました」 「いつも悪いね」 「いえいえ。…あ、社さんの分もありますので、どうぞ」 「ありがとう、キョーコちゃん」 綺麗に並べられたサンドウィッチ。 丁寧にカットされたフルーツ類。 次々と並べられていく昼食は、敦賀蓮の控え室では、ほぼ恒例の光景…いつも通りの出来事となって いた。 きっかけは、些細な事。 食の細い蓮に食事を取らせたいキョーコと、一人暮らしを始めて一人でご飯を食べるのは寂しいと言 ったキョーコを気遣う蓮の意見が一致した事。 二人で食事を取れば、何も問題が無いのだと。 昼はこうしてお弁当を一緒に広げ、夜はキョーコが食事を作りに行って一緒に食べ、朝はキョーコが 準備していった朝食を食べる。 半同棲に近い様な状態だろうと周囲は思うものの、本人達は『利害の一致』とさらりと言う。 しかし、社は本当にそれだけか?と首を捻る。 この二人、何処をどう見ても付き合っているとしか見えないのだ。 その行動は、長年連れ添った夫婦の様にしか見えないのだ。 そう、例えば…。 「…あ」 たった一言、キョーコがそう言っただけで、 「あ、これ?」 「そうです!すみません、ありがとうございます!」 蓮はキョーコが何をしたいのか分かってしまう。 これが、『利害の一致』だけで一緒にいる人間の行動だろうか? 「蓮とキョーコちゃんってさー」 サンドウィッチを口に運びながら、その光景を見ていた社が口を開く。 「はい?」 「何ですか?」 振り向くのも、タイミングが合っている。 「夫婦みたいだよねー」 次の瞬間、飲み物を飲んでいた蓮がむせ、キョーコがフォークにフルーツを刺し損ねた。 「はいぃ〜!?」 「何をいきなり…」 「普通は付き合ってもいない、『利害の一致』だけで一緒にいる人間が、『あ』って言葉だけで何がした いのか分かる筈が無い!」 きっぱりと言い切った社に、今度は、 「と言われましても…」 「ねぇ?」 お互い顔を見合わせ、蓮とキョーコが首を捻る。 その様子を見た社は、天井を仰ぎ、はあぁと大きなため息をつく。 「まぁいいや、俺、ちょっと事務所に連絡してくるから…」 「じゃあ残しておきますね」 「お願い…」 このままの状態があとどれ位続くのかと思うと、社は胃が痛くなる。 一般論からちょっとかけ離れた関係だぞ、二人とも、と言いたい気持ちを抑えて社は控え室を出た。 無意識に二人の空間を作り出す蓮とキョーコから離れる為に。 「社さんも…変な事言いますよね〜」 「そうだね、夫婦だって」 「毎日ご飯食べていただけで、夫婦になれたら吃驚ですよ」 「ああ。だってこれからお互い相手が見つかるかもしれないし…」 「ですよね」 社にいなくなった控え室では、この様な会話が二人の間で続いていた。 だが、ふいに二人とも口を閉じる。 蓮は時計を見る視界の端に。 キョーコは飲み物の入った紙コップ越しに。 お互いを見ながら、考える。 (キョーコちゃんに恋人が出来たら、この状態は解消しなきゃ、だな…) (敦賀さんに恋人が出来たら、この状態は解消しないと、だわ…) ――この状態。 毎日の様に家に通い、一緒に食事を取る事。 行き帰りに、車に乗る事。 当たり前の様に、隣に座って笑う事。 それらをすべて、無に返さなければ―― 「それは……」 「嫌、だなぁ……」 ぽつ、と言葉になる二人の思い。 だがお互いに聞こえていない様で、その言葉に対して何も言わない。 何も言わずに、無意識にお互いを見ている。 (敦賀さんの傍、居心地いいんだけどな…。離れたくないな…) (キョーコちゃんに離れられるの、居場所を無くすみたいで嫌な気分だ…) (これって、つまり、私って…) (これは、つまり、俺は…) ――この人が、好きなのかもしれない。 「ああ…成る程…」 「そっか…そうなんだ…」 蓮が口の端をあげて、軽く笑う。 キョーコがくすくすと、軽く笑う。 今度はお互いの声が聞こえたが。 ようやく二人とも、お互いの顔を見つめているのに気がついたが。 あえて聞かない。 あえて問わない。 そんな事をしなくても、自分の考えていた事が相手には分かったと思うから。 そんな事をしなくても、お互いの考えた事が手に取る様にわかってしまったから。 「敦賀さん、夫婦、ですって」 今だ、くすくすと笑いながらキョーコが言う。 「その前に、恋人、って言ってほしいよね」 机に肘をつき、笑いを堪える様に、けれども優しい笑みは浮かべながら蓮が言う。 「本当に。社さんったら飛びすぎですよ」 「ま、将来的にはその方向で」 「私でよければ、喜んで」 毎日の様に家に通い、一緒に食事を取る事。 行き帰りに、車に乗る事。 当たり前の様に、隣に座って笑う事。 それは今までも、そしてこれからも。 二人にとって、いつも通りの出来事となる。 ★「椿姫」様、サイト復活100000Hitお祝い献上品★ -------------------------------------------------------------------------------- 祝復活☆『姫椿』サイトマスター山茶花様へ献上させていただきましたvv 本来の予定は、サイト復活祝い…だったんですが、何処をどう考えても過去の出来事…_| ̄|○ と言う事で、100000Hitのお祝いにさせていただきます〜。 リクエスト内容は、『恋人未満設定で、どうやらお互いの事が好きらしいと気づく瞬間』でございました。 ええっと…こんな感じでいいのでしょうか…? 私にはどうにもこうにもこんな風にしか書けませんでした…。 山茶花様、書き直し及び苦情受け付けておりますので、何かありましたら仰ってくださいませ!!
<管理人より、愛のコトバ>
尊敬するふぁいさんから、10万ヒット記念に、といただきました。 このような勿体無いくらいの素晴らしいお話を下さって、本当に感謝の気持ちでいっぱいです! 私の書く話とは、天と地ほどの差が感じられます。頬が緩みっぱなしです。妄想が加速します(笑)! なんて素適なお話v微妙な部分がツボにはいる私の書きにくいリクに、もう200%以上の大満足な 蓮キョを堪能致しました。社さん、相変らず素適です。苦情なんて、とんでもない!!宝物として、 飾らせていただきます!皆様にも、この感動をおすそ分けです〜☆ こんな、二人の関係っていいですよね。当たり前って、凄く大事だと思うんです。二人は、きっとそれ をわかっているのだなぁ、としみじみ感じました。 本当に、ありがとうございました!!
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()